ファッション教育の中で「生成AI」はきっと必須になる
ー画像生成から一歩踏み込んだ新しい在り方の試みー
東京モード学園では昨年からOpenFashion社と連携し、画像生成AIを活用した授業を1,000人以上の同校の生徒を対象に取り組んできました。
その後、さらなる生成AIを活用した取り組みとして、モード学園では画像生成AIでつくったデザインからパターンを起こし、実際に人間が着用可能なものとして制作。数々の個性的なデザインが実物となりました。人とAIが生み出した革新的なデザインを実物として作るに至った背景から、学生たちが授業を通して学んだこと、周囲の反応、そして今後、ファッションにおける教育で生成AIは必須となり得るのかなどを、授業を担当した小久保先生に伺いました。
July 05, 2024
● 画像生成から一歩踏み込んだ新しい在り方の試み
● “絵を描くのが苦手だから…”というのを乗り越えられる
● ファッションと生成AIの親和性は間違いなく高い
● 生成AIを使いこなせる学生が社会に出れば、様々な変化が生じる
● 画像生成から一歩踏み込んだ新しい在り方の試み
まず、なぜ“生成AIデザインを実物にする”という授業に取り組もうと思ったのですか?
単純に、デザインを画像生成するだけで終わらせたくなかったからです。生成AIを活用することで学生のインスピレーションは磨かれ、思いもよらないデザインが生まれるという革新的な体験はできたと思いますが、取り組むにつれて「そのデザインをいざもの(実物)にできるのか?」という疑問が単純に湧いた、というところですね。
生成AIを活用した“新しい在り方の試み”ともいえると思います。
人と生成AIによって生み出された複雑なデザインの切り替えを、自分たちがもっている知識でパターンに起こしていく。普段であれば立体化することも想定しながらデザインすることが多いのですが、「偶然生まれたものがどういう風に立体化できるのか」という点がいつもと違うこともあり、非常に学びが多かったです。
そして もうひとつ この授業を通して個人的に感じたのが、生成AIを通した学びは就職活動においても役に立つのではないか、ということです。現在は主に4年生が生成AIを活用した授業を受けているのですが、その背景には彼らが就職活動の際に今回のような取り組みの話題を出したときに、「面白いことをやってるんだね」と企業側に興味を持ってもらえる可能性があると考えています。
生徒には常に新しいものを取り入れながら、自分をアップデートしていって欲しいですね。
● “絵を描くのが苦手だから…”という意識を乗り越えられる
生徒をはじめ、学校関係者の方々の生成AIに対する反応はどうでしたか?
生徒や先生を含め、ほぼ全員がポジティブな反応ですね!他の先生たちからは「これはすごいことだ」と(笑)学内では今いちばん新しく、注目すべきものという評価です。この東京校での取り組みをきっかけに、名古屋と大阪のモード学園でも生成AIを授業に取り入れ始めました。そして学生たちは、当初から生成AIツールを違和感なくすんなり受け入れていました。もうひとつの自分や、相棒みたいに使いこなしてクリエイトしていく感じですね。
ファッション学科の中には手書きデザインが苦手な生徒もいるのですが、その子が生成AIを活用したファッションデザインコンテスト「TOKYO AI Fashion Week」の審査を通過したときに、それを僕に嬉しそうに報告してくれた姿も印象的でした。
今までと違う方法でのアプローチだからこそ、頭角を表す子もいる。
そういう生徒たちの新しい才能を垣間見ることができるのも、生成AIの魅力のひとつだと思います。
● ファッションと生成AIの親和性は間違いなく高い
ファッション教育において生成AIは必須になると思いますか?
必須になると思いますよ。東京モード学園の卒業生で、現在第一線で活躍している先輩デザイナーの中にも、生成AIを取り入れたデザインを発表している人がいます。
そのひとりである、「SEVESKIG(セヴシグ)」のデザイナー 長野さんの話を聞く授業があったのですが、「MaisonAI(※)」を生徒たち自身も使っているので、生成AIを活用したデザインの話もすんなり理解できたようです。
※OpenFashion社が提供する生成AI支援活用ツール
実際にファッション業界で活躍する人たちも生成AIを活用しているという話を聞いて、生徒たちも今の取り組みを仕事に生かせるのでは…と思ったのではないでしょうか。生成AIをつかった授業を通して、僕自身もファッションと生成AIの親和性は間違いなく高いと感じています。
● 生成AIを使いこなせる学生が社会に出れば、様々な変化が生じる
今後も学校として生成AIを取り入れていきたいですか?
はい、「生成AIを取り入れた授業をカリキュラムに組み込んでいこう!」という話は学内でも既に挙がっています。
アパレル業界での3D CAD(スリーディーキャド)の需要の高まりに合わせて、モード学園でもそれが必須重要科目になったように、生成AIもスポットというよりしっかりと授業の中に組み込んでいくことに今後はなるかもしれません。
生成AIを使いこなせる学生が社会に出れば、ものづくりや商品販売などのフローで様々な変化が起きることでしょう。
そのためにもモード学園としてはMaisonAIをはじめ、生成AIを活用するシーンを積極的に増やしていきたいです。
Interviewee
東京モード学園 教務部 主事
小久保 直明 さん
1994年に名古屋モード学園を卒業。オンワード樫山のブランド組曲、ポールスミスウィメンのチーフデザイナーを担当。三陽商会においてバーバリーブルーレーベル、ブルーレーベルクレストブリッジのチーフデザイナーを経て、2019年より東京モード学園に入職しファッションデザイン学科の教師を務める。
Interviewer
OpenFashion 広報
藤田 ゆり
生成AI関連のサービス開発に取り組む株式会社OpenFashion広報。新卒でインターネット関連事業会社に入社し、現在は広報としてOpenFashion社が開催する生成AIファッションデザインコンテストや、同社が提供する生成AI導入支援サービス「MaisonAI」関連の発信を多く行っている。「初心者にも伝わる生成AIの魅力」というのを意識して広報活動に取り組んでおり、自身の業務でも生成AIを活用しながら、人とAIが上手く共生できる形を日々模索している。